ちょっと過激なタイトルとなっていますが、厳密には「ウソ」ではありません。
しかし、お客様の立場からすると「ウソじゃん!」と思える内容です。

正直、大規模ソーラーの場合はさほど影響を受けない可能性もありますが、
ソーラーの規模が小さくなればなるほど「これからお伝えする内容は深刻になっていく」と思います。

では、ここ3ヶ月の間で実際に起きた事例(2つ)の内、1つを紹介したいと思います。

事例1 保証期間が切れた太陽光パネル

最初の問い合わせは2024年の5月でした。昨年秋頃から発電量の低下が気になってきたようですが、既に太陽光を販売・施工した会社は倒産し「悪いけどこっちの面倒も見て」との事で対応することになりました。

保証書の確認をしたところ、
 太陽電池モジュールの製品保証は「保証開始日より10年」
 太陽電池モジュールの出力保証は「保証開始日より25年」

となっており、現時点で「保証開始日から11年半経過」しているため、製品保証(10年)は切れていますが出力保証(25年)は残っている状況です。

8月中旬に検査した際、128枚あるパネルの内「約1割にあたる14枚で確実に不具合がある」事を確認し、後日、2人がかりでパネルを外して個別測定を実施しました。
ところで、パネルの不具合を探した方法ですが、上の写真のような測定器を使用してパネル表面(サイド)の電極に当てていき、測定器の接地面を上下にスライドさせます。
すると、「電気が流れている = 発電している」場合には”ピーーッ”と音が出ます。
※音が出るのが正常となります。

逆に発電していない部分があれば、音が止まります。
※電気が流れていないため音が止まる仕組みです

今回は、「音が止まったパネルが14枚見つかった」という事になります。
測定器にて「発電不良?」と思われる14枚のパネルについて、正常品(良品)と「どの程度性能が落ちているかを確かめる」ために、電圧測定を実施しました。
電圧測定をするためには、パネルをめくることになります。野立ての場合は比較的楽ですが、今回は屋根上設置でございますので、、、ちょっと面倒ですね。

上の写真は「良品」のパネルです。
はっきり言って外観は完全な不良品ですが、製品保証が既に切れているためどうすることも出来ません。ただ、電圧値は「33V」ありますので、このパネル(240W)なら性能は「良品」の値となります。

それにしても、私はこの業界で約20年ほど関わってきましたが、正直、11年程度でこれほどの傷んだ状態は見たことがありません。バックシート(裏側)もボロボロです。
メーカー名は伏せますが、当時「安かった」記憶はあります。

このパネルも何れダメになるのでしょうが・・・、とりあえずはこのパネルの電圧値(33V)を良品の基準とし、事前確認で不具合の疑いがある14枚を調べていきます。
14枚のパネルをめくりましたが、本当にバックシートの状態がひどいです。
上にテスターの写真を2点載せましたが、「21.43V」の値は先ほどの良品電圧値「33V」の約2/3の値となっています。
いわゆる「クラスタ故障」というヤツです。
ここではクラスタ故障の詳細は説明しませんが、要は良品の2/3しか発電できなくなった訳です。
このパネルは240Wのため、「160Wのパネルになった」という事になります。

これで、先程の「測定器で音が鳴らない原因」が分かりました。

という事は、更にお隣の「10.84V」の値は良品の1/3しか発電できなくなったため、
なんと「80Wのパネルになってしまった!」事になる訳です。


因みに、クラスタ故障を知りたい方は下のリンクをご参照ください。
※音の鳴る測定器を開発したメーカーのブログです

☆クラスタ故障と発電力の低下について
https://www.solamente.biz/reduced_power_generation/
☆電圧測定では見逃す“高抵抗化クラスタ故障”とは?
https://www.solamente.biz/cluster-failure/
上の写真は更に過激です。何回測定しても電圧値が「0V」となります。
こんなの初めて見ました! 全く発電しないパネルでございます。
お客様の言う「発電が落ちてきた」は、「そりゃ当たり前でしょ!」と思わず言いたくなる程の不具合でございます。

という事で、14枚全ての出力が大幅に落ちているため、出力保証(25年)の対象になるかを確かめるためにメーカーへ不具合報告を出してみました。

メーカーの回答

製品保証の10年が経過して不具合報告を出したのは初めてですが、私の中で「出力保証なんて使えないのでは?」という疑問を昔から持っておりまして、今回の不具合が「出力保証の対象」になるかは私の中でとても関心があるところでありました。

なぜ関心があるかと言いますと・・・、後で詳しく説明いたします。


今回のメーカーの回答は以下となります。(公開不可のところは「*」で隠しております)

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お世話になっております。
パネルの不具合報告いただいた件ですが既にパネルの保証期間が過ぎております
現在代品にて提供可能なパネルは下記となります。

****-**
**円/W+送料*****円(税別)※14枚購入の場合
*㎜スペーサー(4個セット)
****円/セット(税別)
ご購入にて交換対応お願い致します。
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やはり有償でしたか!

なら、「出力保証はどんな時に採用されるのか?」を確認するべく問い合わせたところ、
次の回答がやってきました。

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製品保証10年
⇒製品不具合による保証

出力保証25年
製品の不具合が無い状態で既定の出力低下が認められた場合による保証

その為、ご報告いただきました内容を確認したところ、製品不具合を起因とした電圧低下となりますので出力保証は適応外となります。
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お分かりでしょうか?
因みに、メーカーはおかしな事は言っておりませんが、私の意見といたしましてはこの時点で「出力保証はまず使えない保証になった」事が確定いたしました。

全く使えない「出力保証」

出力保証の一例を上の画像に上げておきました。
ここであらためて説明しておきますが、仮に今回の良品基準が測定時の「33V」だった場合、事例(11年経過)のパネルは良品基準の80%未満であればNGという判定になります。
今回測定した不具合品14枚は全て70%以下の出力のため、「出力保証が適用」できれば全て交換対象となった訳ですが、「製品保証の対象となる」との理由で保証外となっております。


先に上げたメーカーさんの回答で、出力保証25年は「製品の不具合が無い状態で既定の出力低下が認められた場合による保証とありました。

ここから先はあくまでも個人的な見解でございます。
間違っても「私が正しい」と主張している訳ではございません。

それを踏まえ、「出力保証は25年であろうが30年であろうが50年であろうが、どれだけ長期保証でも使えない保証である」と私は思っております。

そう思う理由は2点ございます。
1点目「不具合品の判定がとても大変である」こと。
2点目「不具合品判定までの費用が高額になりやすい」こと。

以下、具体的に説明します。
まず1点目の「不具合の判定がとても大変である」に関しては、具体的には「外観(外部)からの良否判定が出来ない」事になります。

その「外観(外部)からの良否判定」について、私共で実施しています主なの検査方法(3種類)を上に(画像)アップしました。
順番に、
・パワコンの各系統から見るパネルの不具合検査
・パネルの表面から発電状況を見る不具合検査
・サーモカメラ(温度)から見る不具合検査


以上のようになりますが、これらの検査は「製品の異常(不具合)を特定するための方法」です。

という事は、上記の検査で特定できる不具合は全て製品保証に該当するため、「出力保証を適用させる方法としては使えない」という事になります。

そりゃそうですよね?
出力保証は製品の不具合が無い状態で既定の出力低下が認められた場合だそうですから。

ならば、「別のアプローチ」となる訳ですが、「IVカーブトレーサー」の使用が大前提で、
・パワコンの各系統から発電低下の疑いがある系統をピックアップ
・該当する系統全部の「パネルの開放電圧を測定」する

と、文章にしますと簡単に思えてしまいますが、、、これは大変です!
果たして、ここまでやる人はいるのでしょうか?
実際にIVカーブトレーサーを使っていないので何とも言えませんが、おそらく今回の事例の場合、ほぼ全部のパネル(128枚)の開放電圧を測る可能性がある訳です。
続いて、2点目の「不具合品判定までの費用が高額になりやすい」ですが、
「パネルを外す電圧を測定するパネルをもとに戻す」って地味に大変です。

野立ての場合はパネル下に入ることさえできれば手間ですけどそれ程の労力とはなりませんが、屋根上設置は最悪です。屋根勾配がキツければ絶望的です。

正直、工事と同じになってしまいます。

更に不具合特定と大きく異なる点は、事前に悪い箇所の「アタリ」をつけてからピンポイントでアプローチする方法に対し、「この系統のどこかに悪いパネルが含まれている・・・かも」みたいな状況で、その系統全てのパネルを検査するわけですから、「無駄が多い」上に「検査して空振り(不具合なし)もあるかも」というリスクが出てきます。

それでも費用はかかる訳です。
「100枚検査して3枚の不具合を見つけました! 費用は30万円です」なんて報告受けて、素直に喜べますでしょうか?

正直、費用対効果が悪すぎる訳です。

因みに、メーカー保証を受けるためには物的証拠を提出しなければいけません。
そのために、先に上げたようなパネル1枚づつのデータ(電圧値等)が必要となってきます。

どこまでも費用をかけて良ければ見つけることは可能ですが、誰もそこまで望んでいないでしょうし、不具合をとことん見つけても結果的に費用負担(損)をするのはお客様ですから、どうしても出力保証は「あっても使えない」と思えてしまいます。

結論(今後の対策)

冒頭に、ソーラーの規模が小さくなればなるほど「これからお伝えする内容は深刻になっていく」と申し上げましたが、その理由を今から申し上げます。

まず、規模が小さい場合は屋根上設置が圧倒的に多いかと思います。
住宅の場合はほぼ全部が屋根上ではないでしょうか?
そして一般的な話として、太陽光パネルに不具合が起きた場合、
「無償供給の対象は太陽光パネルのみ」であり、他はお客様負担であることをご存知でしょうか?

仮に、「5寸勾配(約26°)の傾斜屋根の住宅に24枚のパネルが設置してある」とします。
このパネルを全数検査した場合、足場代+検査費となり25万円程度はかかることとなります。
そして、仮に「6枚のパネルに不具合が見つかった」とします。
メーカーより、6枚のパネルは出力保証により無償提供を受けましたが、今度は交換費用として足場代を含む20万円の費用がかかる事になります。

この様な状況の場合、あなたは45万円を支払って6枚のパネルを交換しますでしょうか?
「YES」の場合は、確かに費用負担は痛いですが発電量は復活し元の状態に戻ります。
「NO」をご選択の場合は「今が一番良い状態」となり、時間の経過と共に発電量がどんどん低下していく可能性があります。

お分かりでしょうか? 規模が小さいと動けないのです。
上の例ではどっちも「損する」気持ちになりませんか?

規模が大きい場合は、「最初からメンテナンス用(交換用)のパネルを100枚ほど用意しておく事も可能ですが、規模が小さい場合は「保証に頼らない運営」は難しいのが現状です。

以上より、出力保証がとても使いにくいものだという事はご理解頂けたのではないでしょうか。
ならどうすればよいのでしょうか?
それは、「製品保証期間の長いメーカーを選ぶ」「国内メーカーを選ぶ」であります。
そして、「製品保証の切れる最後の年に太陽光発電の点検を受ける」であります。
あくまでも「規模が小さい」方の場合です。

上の事例は国内メーカーである長州産業の保証内容となりますが、現在殆どのメーカーさんは「製品保証(機器保証)」が15年となっているようです。
事例のお客様も製品保証が15年でしたら無償対象であった訳ですので、ここの保証期間は長ければ長いほど良いと思われます。
※メーカーの中には「製品保証25年」もあるようです

そして国内メーカーが良いのは、「何かあった際の対応の早さ」です。
実例として、ある海外メーカーのパワコンは故障発生してから半年以上経過しても復旧しませんでしたが、国内パワコンメーカーの場合は2週間程度で復旧出来てしまいます。

また、海外メーカーの場合「そのサイズのパネルは既に生産中止となり在庫もないため供給できません」と平気で言ってきますが、国内メーカーの場合は今のところそのような問題は起きておりません。

住宅用でも海外メーカーの有名どころはありますが、根本的に日本の風土にあった考え方ではありませんので、「保証期間内で無償ですけどパネルがないからお金で返します(本当にあった話です)」という対応になった場合、大規模ソーラーならあまり大した話ではありませんけど、住宅用でこの様な事を言われた場合は、本当にダメージがでかいです。
なぜなら不具合品のせいで発電量全体が低下しているのに、保証するのは不具合枚数分の金額(しかも驚くほど少ない)ですから,割に合わないどころではありません。大損です。

最後に、「出力保証」を当てにしない場合は、当たり前ですが製品の品質レベルというものが重要視されます。

製品の不具合(故障)に関しては安価に確認できる方法が揃っています。
しかし、製品の不具合ではない出力の低下については調べるだけで大ごとになりますので、国内製造のメーカーさんの方が過去の実績(品質)からも安心かと思っております。
※規模が小さい方の話となります


以上より、「出力保証は当てにならない」訳ですから、計画する発電規模に応じてなるべく製品保証の長いメーカーさんをご選択された方が無難かと思います。
そして、「製品の保証期間が切れる前に点検をおすすめいたします!」



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愛知県の瀬戸市と尾張旭市、長久手市を中心に太陽光発電・蓄電池の販売・施工・メンテナンスを行っております。
「最近、売電収入が減ったような気がする・・・」とお感じの時は、「パワコン」や「太陽光パネル」の不具合が起きているかも!
当社は不具合対応の多数実績がございます。調査が必要かどうかの判断もお問い合わせ頂ければすぐに分かります!
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